フォノケーブルAM-Phono1のご紹介

当店には、店頭や雑誌でお披露目しつつ、ホームページに掲載していない商品がたくさんあります。むしろ製作品の大部分がホームページに紹介されていません。その中のひとつ、現在発売中の季刊アナログ( Analog Vol.64)のフォノケーブル比較試聴特集に掲載されつつも、当店のホームページには掲載してなかったフォノケーブルAM-Phono1を取り上げます。

特注のフォノケーブルは今まで何例か製作してきましたが、そろそろ当店の定番フォノケーブルをご用意しようということで製作したのが、このAM-Phono1です。AM-Phono1はフォノケーブルのご要望を受けて今まで数本製作してきました。しかしながら、製作に時間が掛かるので、あまり注文が来すぎても困るという理由でホームページ上に載せていなかったケーブルです。

 

過去に様々なケーブルや線材をフォノケーブルに使用してきたのですが、それら過去の経験と幾つかの知見があって、このAM-Phono1は生まれました。その経緯について以下に述べますが、とりとめのない話なので、読み飛ばしてくださって構いません。

MCとMMでは、適したケーブルが異なる。MCカートリッジを用いる場合は、微弱信号をロスなく伝達するために、ケーブルの電気抵抗を極力下げたケーブル、すなわち導体断面積を大きくした方が好ましいと、もっともらしく言い伝えのように聞いたことがある。しかし、聴感上は導体が太すぎるのは好ましくない。それよりも、フォノケーブルをできるだけ短くした方が音質上有利と感じる。例えば、RCAラインケーブルとしては優秀なハイエンドの極太ケーブルを、RCAフォノケーブルとして使用してみたら冴えない音だったというのは、ままありえる話である。

MMはハムノイズに弱いのでシールドがほぼ必須。またMMは、ケーブルの静電容量(キャパシタンス、単位:pF)によって再生帯域にピークや減衰が生じやすいと言われる。静電容量とは、二つの導体の間に挟まれた絶縁材に溜まる電気の蓄積量というと分かりやすいだろうか。オルトフォン2MシリーズやテクニカVMカートリッジなどに代表される100~200pFあたりの低静電容量型ケーブルが推奨されているカートリッジ。SHURE M44あたりの400pFといった高い静電容量のケーブルが推奨されているカートリッジ。SHURE V15シリーズでは300pF程度のケーブルが推奨される。M44に低静電容量のケーブルをあてがうと、15kHzあたりから上の帯域がだら下がりに減衰する。低静電容量推奨カートリッジに高い静電容量のケーブルをあてがうと、15kHzより少し低い帯域に急激なピークが生じてしまうことが知られている。このように、MMカートリッジごとに適したケーブルが違うというのは、アナログ全盛時代にはよく知られていたことだった。例えば、1970年代には、サエクが低静電容量フォノケーブル、MC専用フォノケーブルなどを発売していた。また、米国のDBsystemだったと記憶しているが、静電容量を数パターン切り替えできるフォノケーブルを発売していた。また、私が某社に在籍時代、私が最後に企画した商品が、低静電容量フォノケーブルPH-01RRだった。さらに、静電容量を切り替えできるアタッチメントを開発していたが、これは開発途中で私が某社を退職したので頓挫してしまった。

さて、実際のところ、静電容量とMMカートリッジの相関が聴感上感じられるのかというと、試聴環境によっては非常に強く感じられた場合があった。しかし別の試聴環境では、導体の材質や絶縁材の材質の方が強く影響していると感じる事もあった。フォノケーブルというのは一筋縄ではいかないものだ。

私が独立後、フォノケーブルでやりたかったのは、DL103からV15Type3、はたまたSPUまで、どんなカートリッジでもミスマッチングにならないフォノケーブル。一定の水準以上の安定した音質を有するのは勿論のこと、きつ過ぎず、ボケ過ぎず、聴いていて楽しくなるようなフォノケーブル。これが意外と難しい。試行錯誤の途中経過は省くが、結果出来上がったのがAM-Phono1だった。

 

導体には細めの銀メッキ銅を使用し、絶縁材はフッ素樹脂。外装シースとして革を巻き付けている。革と言っても合成皮革なのだが、これが音色のチューニングに一役買っている。アース線はOFCフッ素樹脂線(通称:トデンアラカワ線)。アース線のYラグも銀/金2層メッキのオリジナル。RCAプラグは真鍮削り出し金めっきの本体と、ひょうたん型真鍮削りだしカバーを有したオリジナルRCAプラグを使用している。5pinDINはしっかりとした造りのAECコネクタ製を採用。

長さは1.2m。価格は税込み27,000円。現在ストックを作る時間的余裕がないので、ご注文いただいた上での受注製作となります。それでもよろしければ、電話(03-6284-2927)かメール(shop@audiomijinko.jp)かご来店でご注文承ります。5pinDIN-XLRバランスケーブル、RCA-RCAバージョン、RCA-XLRバランスケーブルも特注製作可能です。長さ変更も可能です。お見積りお問い合わせください。オーディオみじんこ店頭にAM-Phono1の試聴デモケーブルがありますが、普段はレコードプレーヤーに接続されているので、見たい、触りたい方はスタッフにお申し付けを。

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