今日はケーブル修理の例のご紹介。当店では開店以来、たまたま来店された方や、ネットでケーブル修理業者を探して当店を見つけてご依頼される方、私の独立のことを知って依頼されてくる方、口コミなど、様々なルートで修理依頼が続々寄せられてきます。前職で、日々問い合わせのある修理依頼を受けたくても、他社製品だから受けられないという経験から、そのような困っている人々の手助けができれば、というのが当店設立の主旨の一つです。
こちらはアメリカのPAD(ピューリストオーディオデザイン)のRCAケーブルコロッサスRev.A(Colossus)の修理。これはプラズマシールドではなく液体シールドのモデル。PADの液体シールドは数年で液体が消失することが知られており、この個体もすでに液体は蒸発。今回の修理依頼は液体の再充填ではなく、RCAプラグのグランド側の破損によるプラグ交換。写真ではちょっと分かりにくいけど、RCAプラグのグランドの切り欠きの一部が無くなっています。このケーブルのクライアント様曰く、プラグの破損によってRCAジャックへの篏合ができず、使わずにお蔵入りされていたのですが、当店にたまたまご来店され、お話ししているうちに、このケーブルの存在を思い出され、後日このケーブルをご持参で再度ご来店されました。なお、当店では液体シールドの再充填はできません。
コロッサスを分解します。熱収縮チューブとメッシュチューブを外して、プラグカバーを外すと中身が見えてきました。ホットボンドでプラグ内が固められています。ただ、もう一本側を分解したとき、プラグ内はホットボンドが見受けられなかったです。プラグには塩化ビニルチューブと思われる透明のチューブが通されており、中にはなにやら水色のケーブルが透けて見えます。
プラグ内のホットボンドをヒートガンで溶かし、溶けたホットボンドを丁寧に取り除きます。そして、はんだ小手ではんだを溶かしてケーブルをプラグから外します。半透明のチューブの中から出てきたのは水色の2芯シールド線。導体は0.5スケア程度の軟銅線、黒と白のフッ素樹脂絶縁、シールドはたぶんすずメッキと思しき編組。
ケーブルが10㎜径ほどあるので、一般のRCAプラグでは交換できず、私の手持ちの幾つかの10㎜以上の開口径のRCAプラグをご提示し、クライアントが選ばれたのは、私の秘蔵コレクションのWBT-0150。WBT-0150はWBT社のRCAプラグの中でも最も開口径が大きいもので、たしか11㎜まで対応できたはず。使わずにずーっと保管していたもので、できれば手放したくなかったのですが、コロッサスにはこれが相応しい。思い切って手放すことにしました。ネクスジェンの登場と入れ替わりに、WBT-0150はWBT-0101・WBT-0108・WBT-0144などとともに、8年ほど前に絶版になっております。
なお、ヤフオクなどで出回っているWBT-0150のほとんどは偽物です。ご注意を。偽物はプラグの引き出し口が短い、ローレットの刻みが雑、品名やシリアルNoのシルクプリントが汚い、などで容易に見分けられます。
WBT-0150にぐらつきなく水色の線材を固定するために考えて製作したのが、このような自作の栓。熱収縮チューブを何回も重ねて成形しました。さて、これをどのように使うかと言うと・・・
この栓を透明のチューブに挿し込むのです。抜けないようにボンドを少しつけて挿し込みました。
ついでWBT-0150の本体にケーブルを挿し込みます。
メッシュチューブの端をテープで仮固定してから、余分なメッシュチューブをナイフで綺麗に切り揃えます。そののち、メッシュチューブをいったんプラグと反対方向に少し押し縮めてから、今後はWBT-0150のケーブル引き出し口の隙間にメッシュチューブを潜り込ませます。
仕上げに透明の熱収縮チューブ(スミチューブC)を被せて、WBT-0150のカバーを装着して作業完了!どうです、なかなかいい感じに仕上がったでしょ。
このコロッサス、実は5 mペアとずいぶんと長いんです。破損したのは4か所のうち1か所だけですが、音色を揃えるため、破損していないもう1本側の端末も純正RCAプラグからWBT-0150に交換しました。
入り口側は純正プラグのまま。出口側のRCAプラグをWBT-0150に交換。クライアント様も喜んでおられ、きっとご自宅のオーディオシステムにコロッサスが復帰していることでしょう。クライアント様ご依頼ありがとうございました。もし、コロッサスなどの極太RCAケーブルで、今回の修理例と同様のご依頼をご希望の方へ、当方はもうWBT-0150を保有していませんので、WBT-0150をご持参の上でしたら同じ作業が行えます。またはWBT-0150ではありませんが、開口径11mmないしはそれ以上のRCAプラグも当店では保有していますので、それらを用いての修理は可能です。
当店ではケーブル以外の修理はやっておりませんが、CDプレーヤー、アンプ、トーンアームの修理などでお困りでしたら、知り合いの修理業者のご紹介は可能です。